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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 読人知らず  
340   
   雪降りて  年の暮れぬる  時にこそ  つひにもみぢぬ  松も見えけれ
          
     
  • つひに ・・・ 最後まで
  • もみぢぬ ・・・ 紅葉しない
  
雪が降り年が終わる、そんな時にこそ最後まで色が変わることがない松が意識されることだ、という歌。 "もみぢぬ" は、「もみぢ+ぬ」で上二段活用の 「もみづ」の未然形+打消しの助動詞「ず」の連体形である。ざっと読むと「年の終りについに」という言葉の感じから、「もみじした」というように 「ぬ」が完了の助動詞に見えるが、完了の助動詞「ぬ」が 「松」に付くためには、「もみぢ+ぬる」となると思われる。 「つひに」という言葉を使った歌の一覧は 707番の歌のページを参照。

  松は常緑と言うけれど、それゆえ変化に乏しく地味である。春や秋にはどうしても花や紅葉で季節を彩る草木に目が向く。それが雪が降り枯れ木ばかりが寂しくたたずむ時期、季節もこれ以上ないという年の果てになってはじめて常緑の松の存在感が出るという感じか。歌自体も地味だが、その中で "松も" の 「も」が効いている。

  この歌に呼応している歌として、同じ「寛平の御時きさいの宮の歌合せ」の次の源宗于(むねゆき)の春の歌がある。どちらも現存する「寛平御時后宮歌合」に残っているが、そこではこの歌は 
「年の暮れゆく 時にこそ」となっている。

 
24   
   ときはなる  松の緑も  春くれば  今ひとしほの  色まさりけり
     
        また、「寛平御時后宮歌合」で実際に、この 「つひにもみぢぬ松」の歌(左)に合わされている歌(右)は、次の読人知らずの歌である。

    我が宿は  雪ふる野辺に  道もなし  いづこはかとか  人のとめこむ

  その歌に似た言葉を使っている歌としては、冬歌の中に次の読人知らずの歌がある。

 
322   
   我が宿は    雪 降りしきて  道もなし   踏みわけてとふ  人しなければ
     

( 2001/09/19 )   
(改 2003/12/02 )   
 
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