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       水のほとりに梅の花咲けりけるをよめる 伊勢  
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   春ごとに  流るる川を  花と見て  折られぬ水に  袖や濡れなむ
          
        春になる度、流れる川に花があると見間違えて、折れるはずもない水に袖をひたして濡らしてしまうのでしょうか、という歌。

  水に映った花を折ろうとするというのはまだしも、それが "春ごと" というは少し無理があるような気もする。水に映る花は手のとどきそうな虚像、流れる川は時の流れ、袖を濡らす水は涙、それを 
"春ごとに" 繰り返すとは、何度失敗してもまた繰り返してしまうという気持ちとして、恋への思いと春への思いが混じったものと見ておきたい。

 
( 2001/11/19 )   
(改 2003/10/11 )   
 
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