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       水のほとりに梅の花咲けりけるをよめる 伊勢  
44   
   年をへて  花の鏡と  なる水は  散りかかるをや  曇ると言ふらむ
          
     
  • 年をへて ・・・ 何年も
  
水は何年も花を映す鏡として機能しているのですから、花びらが散りかかるのを曇ることだと言ってよいでしょう、という歌で、 "散りかかる" に「塵がかかる」ということを掛けている。花びらに少しずつ覆われて水は花を映さなくなり、映される側も同時に少しずつただの木に戻ってゆく、という同時進行のイメージをうまくとらえている。

  また、"年をへて" という少し暗めの語感が "曇る" という後半に合っている。 「年をへて」ではじまる恋歌に次のような友則の歌もある。 「凍る袂」は冬のイメージだが、どこかこの伊勢の 「鏡」にも通じるような感じがしないでもない。

 
596   
   年をへて   消えぬ思ひは  ありながら  夜の袂は  なほこほりけり
     
        「年をへて」という言葉が使われている歌の一覧は 596番の歌のページを参照。

  この歌も含めて、「言ふらむ」で結ばれている歌をまとめてみると次のようになる。

 
     
44番    散りかかるをや  曇ると言ふらむ  伊勢
249番    むべ山風を  嵐と言ふらむ  文屋康秀
727番    うらみむとのみ  人の言ふらむ  小野小町
1066番    すきものとのみ  人の言ふらむ  読人知らず


 
( 2001/11/21 )   
(改 2004/02/09 )   
 
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