巻一 |
0031 |
春霞 立つを見捨てて ゆく雁は 花なき里に 住みやならへる |
春歌上 |
巻一 |
0043 |
春ごとに 流るる川を 花と見て 折られぬ水に 袖や濡れなむ |
春歌上 |
巻一 |
0044 |
年をへて 花の鏡と なる水は 散りかかるをや 曇ると言ふらむ |
春歌上 |
巻一 |
0061 |
桜花 春くははれる 年だにも 人の心に あかれやはせぬ |
春歌上 |
巻一 |
0068 |
見る人も なき山里の 桜花 ほかの散りなむ のちぞ咲かまし |
春歌上 |
巻三 |
0138 |
五月こば 鳴きもふりなむ 郭公 まだしきほどの 声を聞かばや |
夏歌 |
巻十 |
0459 |
浪の花 沖から咲きて 散りくめり 水の春とは 風やなるらむ |
物名 |
巻十三 |
0676 |
知ると言へば 枕だにせで 寝しものを 塵ならぬ名の 空に立つらむ |
恋歌三 |
巻十四 |
0681 |
夢にだに 見ゆとは見えじ 朝な朝な 我が面影に はづる身なれば |
恋歌四 |
巻十四 |
0733 |
わたつみと 荒れにし床を 今さらに はらはば袖や 泡と浮きなむ |
恋歌四 |
巻十四 |
0741 |
ふるさとに あらぬものから 我がために 人の心の 荒れて見ゆらむ |
恋歌四 |
巻十五 |
0756 |
あひにあひて 物思ふころの 我が袖に 宿る月さへ 濡るるかほなる |
恋歌五 |
巻十五 |
0780 |
三輪の山 いかに待ち見む 年ふとも たづぬる人も あらじと思へば |
恋歌五 |
巻十五 |
0791 |
冬枯れの 野辺と我が身を 思ひせば もえても春を 待たましものを |
恋歌五 |
巻十五 |
0810 |
人知れず 絶えなましかば わびつつも なき名ぞとだに 言はましものを |
恋歌五 |
巻十七 |
0920 |
水の上に 浮かべる舟の 君ならば ここぞとまりと 言はましものを |
雑歌上 |
巻十七 |
0926 |
たちぬはぬ 衣着し人も なきものを なに山姫の 布さらすらむ |
雑歌上 |
巻十八 |
0968 |
久方の 中におひたる 里なれば 光をのみぞ たのむべらなる |
雑歌下 |
巻十八 |
0990 |
飛鳥川 淵にもあらぬ 我が宿も 瀬にかはりゆく ものにぞありける |
雑歌下 |
巻十八 |
1000 |
山川の 音にのみ聞く ももしきを 身をはやながら 見るよしもがな |
雑歌下 |
巻十九 |
1006 |
沖つ浪 荒れのみまさる 宮の内は 年へて住みし 伊勢の海人も |
雑体 |
巻十九 |
1051 |
難波なる 長柄の橋も つくるなり 今は我が身を 何にたとへむ |
雑体 |