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       題しらず 読人知らず  
205   
   ひぐらしの  鳴く山里の  夕暮れは  風よりほかに  とふ人もなし
          
        ひぐらしの鳴く山里の夕暮れは、ただ風が吹き来るだけで、訪れる人もいない、という文字通りの歌だが、 "風よりほかに  とふ人もなし" を紋切り型として、つまらないと見るかどうかがこの歌の評価の分かれ目であろう。 「風が戸をたたく」と言わずにそれをさらりと流していると見れば、昇華された歌と見ることもできる。また、「ひぐらし」と 「夕暮れ」の歌としては、恋歌五に次の読人知らずの歌がある。

 
772   
   こめやとは  思ふものから  ひぐらしの    鳴く夕暮れは   立ち待たれつつ
     
        この恋歌を読んだ後で、「風よりほかに とふ人もなし」の歌を思い出してみると、さて 「ひぐらしの 
鳴く山里の 夕暮れ」だったか、「ひぐらしの 鳴く夕暮れの 山里」だったか、わからなくなる。どちらがよいか考えてみるのも面白いかもしれない。 「ひぐらし」を詠った歌の一覧は 771番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/22 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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