山崎より神なびのもりまで送りに人々まかりて、かへりがてにして別れ惜しみけるによめる | 源実 | |||
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この歌は源実(みなもとのさね)が筑紫に湯浴みに行く時の送別の際の歌であり、前後に白女(しろめ)と藤原兼茂の次の歌があって三つでワンセットになっている。これらについては「古今集人物人事考」 (2000 山下道代 風間書房 ISBN 4-7599-1201-0) の「源実をめぐる離別歌」という章に詳しい考察がある。 |
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歌の意味は、赴任でも左遷でもなく、自分のために行く旅なのだから、こうして別れを惜しまれると、もう気持ちの大部分は 「行きたくない」と言って 「さあ帰ろう」という気分になる、ということ。 続く兼茂の歌の詞書に「今はこれよりかへりねと実がいひけるをりによみける」とあるのを見ると、「おほかた=ここにいるほとんどの人」として、「皆さんはさあ、帰りなさい」と言っているようにも思える。ただその場合、「なむ」が 「なむや」の意味と仮定しても、 "人やりの道" と "いき憂し" の意味のバランスが悪いようである。 「おほかた」という言葉を使った歌の一覧は 879番の歌のページを参照。 "道ならなくに" の 「なくに」は 「道でないのだから」という順接である。 「〜なくに」という言葉を使った歌の一覧は 19番の歌のページを参照。また、次の在原行平の歌と並べてみると、 "いざ帰りなむ" と 「今かへりこむ」が似ているようにも思えて、もう旅の途中の大体のところで、引き返してこよう、と言っているようにも見える。 |
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( 2001/08/29 ) (改 2004/02/24 ) |
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