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古今和歌集の部屋
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巻十一
題しらず
読人知らず
544
夏虫の 身をいたづらに なすことも ひとつ思ひに よりてなりけり
いたづらに ・・・ 無駄に
ひとつ ・・・ 同じ
夏の虫がその身を焼くのも、自分が身を焦がすのも、同じ 「思ひ」が原因なのだ
、という歌。 "思ひ" の 「ひ」に 「火」が掛けれられていて、虫はその火によって誘われ身を焼かれて死に、自分も恋の 「思ひ」に惑わされ身を焦がしているのだ、ということ。
"ひとつ" が 「一種類の=同じ」という意味に使われている歌としては、
245番
の読人知らずの歌に「緑なる
ひとつ
草とぞ 春は見し」というものがあるが、この 「夏虫」の歌では、火に向かって飛んでゆく虫のイメージから 「一心に」というニュアンスがあると考えてもよいような気がする。
( 2001/11/20 )
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