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       題しらず 清原深養父  
603   
   恋ひ死なば  たが名はたたじ  世の中の  常なきものと  言ひはなすとも
          
     
  • たが ・・・ 誰の
  • 言ひはなす ・・・ 〜のように言う・言いつくろう (言ひなす)
  
恋死をすれば噂が出ないことはないでしょう、いくら世の中の無常のものと言いつくろってみても、という歌。わかりづらい歌である。

  前半の " たが名はたたじ" とは反語で、「誰の名が立たないことがあるでしょうか」ということで、ここでは自分と相手の名、つまり二人の仲の噂ということであろう。後半の "常なきもの" とは、無常のもの、常に有り続けることができないものということで、浮世全般に言えることだが、ここでは自分の命のこと。つまり恋死というような変死をしたら、あなたがいくらそしらぬ顔で 「御悔みを申し上げます」などと言っても、二人の仲は噂になりますよ、と相手を脅している歌である。

  あるいは 「無常」に 「無情」を掛けて、「世の中はいくら無情のものだと言っても、恋死をすれば名が立ちますよ」と言っているのかもしれない。 「恋死ぬ」ということを詠った歌の一覧は 492番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/03 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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