題しらず | 読人知らず | |||
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"こりずまに" という言葉の響きが面白い。この 「ま」は一見、「間」に見え、「懲りない間に」という意味のように思えるが、「間」という名詞につながる否定ならば、次の躬恒の歌のように 「こりぬ」と 「ず」の連体形の 「ぬ」であるのが自然だろう。 |
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よってこの 「ま」は 「まま」と考え、「こりずま」で一つの言葉とみなされる。 「こりずま」の使用例としては後撰和歌集・巻十二800の読人知らずの歌や同じく巻十二865の貫之にも次のような歌があり、「源氏物語」で若菜上で和歌の中に読み込まれているのが有名である。 [後撰] 800 こりずまの 浦の白浪 立ち出て 寄るほどもなく かへるばかりか [後撰] 865 風をいたみ くゆる煙の 立ち出ても なほこりずまの 浦ぞ恋しき (若菜上) 沈みしも 忘れぬものを こりずまに 身も投げつべき 宿の藤波 (若菜上) 身を投げむ 淵もまことの 淵ならで かけじやさらに こりずまの波 これらの歌では 「こりずま」が 「須磨(の浦)」に掛けられているが、この古今和歌集の歌の中でも最後の句に "世にしすまへば" と 「すま」が繰り返されている。 古今和歌集の配列で言えば、二つ前の 629番の御春有輔(みはるのありすけ)の歌の「まだきなき名の」と "またもなき名は" が、ペアになっているようにも見える。 「なき名」という言葉を使った歌の一覧は、その 629番の歌のページを参照。 |
( 2001/12/03 ) (改 2004/02/26 ) |
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