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       題しらず 読人知らず  
675   
   君により  我が名は花に  春霞  野にも山にも  立ち満ちにけり
          
        あなたのせいで、私のことは表だってしまい、その噂が春霞のようにあちこちで立って広がっていることです、という歌。軽妙で面白い歌で、"立ち満ちにけり" という最後の一押しが効いている。

  "花に" という挿し込み方は、「春霞」とよく合っていて、ざっと読むと違和感がないが、その意味は少しわかりづらい。
「古今和歌集全評釈  補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) や「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0) では仮名序の 「今の世の中、色につき人の心花になりにけるより...」という部分を引いて、「うわべだけが華やかな状態」というニュアンスであると解釈されている。この歌の場合は 「色に出でて」(=明らかになる)と同じ意味と見ておいてよいのではないかと思われる。

  一つ前には 「むら鳥」を使って 「我が名が立つ」と言う次のような歌もある。

 
674   
   むら鳥の    立ちにし我が名   いまさらに  ことなしぶとも  しるしあらめや
     
        また、「野にも山にも」というフレーズを使った他の歌に、947番の「心こそ 野にも山にも 惑ふべらなれ」という素性法師の歌がある。 「春霞」を詠った歌の一覧は 210番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/04 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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