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       題しらず 伊勢  
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   知ると言へば  枕だにせで  寝しものを  塵ならぬ名の  空に立つらむ
          
        枕が人の心を知るということなので、それさえしないで寝たものを、どうしてチリでもない自分の恋の噂が勝手に広まっているのでしょう、という歌。 「あなた、漏らしたでしょう」というニュアンスが含まれている。

  「だに」という言葉を使った歌の一覧については 48番の歌のページを参照。 「枕が人の恋を知る」ということは、504番の読人知らずの歌や、670番の平貞文の歌にもあり、 "塵ならぬ" は、次の読人知らずの歌で使われている 「塵ならぬ」という表現から持ってきているように見える。

 
989   
   風の上に  ありかさだめぬ  塵の身は   ゆくへも知らず  なりぬべらなり
     
        "空に立つ" の 「空に」は、「古今和歌集全評釈  補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) や「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0)
によれば 「当て推量で」という意味の 「空に」との掛詞になっているということである。恋歌の中で 「空」という言葉を使っている歌の一覧は 481番の歌のページを参照。

  また、この伊勢の歌は、89番の貫之の「水なき空に 浪ぞたちける」という歌に対して、「空に立つ塵」というパロディであるように見えないこともない。 「〜と言へば」という表現を使った歌の一覧は 
635番の歌のページを参照。 この歌は恋歌三の最後の歌である。

 
( 2001/12/03 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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