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       題しらず 左大臣  
1049   
   もろこしの  吉野の山に  こもるとも  おくれむと思ふ  我ならなくに
          
        たとえ中国の吉野の山にあなたが篭るとしても、遅れをとるような私ではありません、という歌。どこに身を引こうとも、自分はあなたをあきらめない、という歌である。

  左大臣(ひだりのおおいまうちぎみ)は、当時(905年前後)左大臣であった藤原時平のこと。時平は 871年生れ、909年没。没年三十九歳。藤原基経の長男。 886年元服と共に正五位下、887年従四位下、890年従四位上、891年従三位、895年正三位、899年左大臣、901年従二位、907年正二位。 「伊勢集」ではこれは、弟の仲平の歌となっており、時平も伊勢にモーションをかけていたことから、この歌は伊勢が大和に身を引いた出来事と関連して見られることも多い。

  古今和歌集の他の歌で "もろこし" と言う言葉が含まれるものには、次の兼芸法師の歌がある。

 
768   
   もろこしも   夢に見しかば  近かりき  思はぬなかぞ  はるけかりける
     
        "我ならなくに" という言葉で結んだ歌には、724番の 「誰ゆゑに 乱れむと思ふ 我ならなくに」という河原左大臣(=源融)の歌がある。どちらの歌の 「なくに」も文末/区切りにあって否定の詠嘆の意味を表している。 「〜なくに」という言葉を使った歌の一覧は 19番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/19 )   
(改 2004/02/19 )   
 
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