Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻三

       題しらず 読人知らず  
137   
   五月待つ  山郭公  うちはぶき  今も鳴かなむ  去年のふる声
          
     
  • うちはぶき ・・・ 羽ばたきをする
  
五月を待っているホトトギスよ、そろそろ出番が近づいた、さあ羽ばたきをして去年と同じあの声を聞かせて欲しい、という歌。 「五月待つ」という出だしでは、139番の読人知らずの「五月待つ 花橘の 香をかげば」という歌の方が有名だが、この歌もバードウォッチングの歌のようで、地味ながら味わいがある。

  "うちはぶき" が具体的にどのような動作を指しているのかわからないが、梢に止まったままバサバサと羽を広げるような感じか。接頭語「うち」が使われている歌の一覧については 12番の歌のページを参照。また 「去年」は 「今」との対比で出しているのだろうが、 "ふる声" というニュアンスがややつかみづらい。この歌だけを見ると単に 「去年−古い」とつなげたようにも見えるが、159番には「去年の夏 鳴きふるしてし 郭公」という歌があり、 "ふる声" には 「何度も聞いた、聞き飽きた」という否定的な気持ちが少しあるようである。それでも時節のものとして聞きたい、というのがこの歌である。

  似た気持ちは次の伊勢の歌でもう少し直接的に詠われている。

 
138   
   五月こば    鳴きもふりなむ   郭公  まだしきほどの  声を聞かばや
     

( 2001/12/06 )   
(改 2004/01/21 )   
 
前歌    戻る    次歌