題しらず | 読人知らず | |||
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"いまだ旅なる" という言葉がホトトギスの「渡り」を指しているように見える。タチバナの花はよい香りがするので、今朝来てはじめて声を聞かせたホトトギスよ、花橘に宿を借りてゆっくりしなさい、という歌である。 次の大江千里の歌はこの歌をベースにしていると思われ、ペアとして見ておきたい。 |
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また、万葉集では次の巻九1755番の高橋虫麻呂の霍公鳥(ほととぎす)の歌のように「ホトトギス−花橘/卯の花」を詠った歌は多いが、古今和歌集では「ホトトギス−花橘」は上記二つ、「ホトトギス−卯の花」の組み合せは164番の一つだけである。 鴬の 生卵(かひご)の中に 霍公鳥(ほととぎす) 独り生れて 己が父に 似ては鳴かず 己が母に 似ては鳴かず 卯の花の 咲きたる野辺ゆ 飛び翔り(かけり) 来鳴き響(とよ)もし 橘の 花を居散らし ひねもすに 鳴けど聞きよし 幣(まひ)はせむ 遠くな行きそ 我が宿の 花橘に 住みわたれ鳥 (鴬之 生卵乃中尓 霍公鳥 獨所生而 己父尓 似而者不鳴 己母尓 似而者不鳴 宇能花乃 開有野邊従 飛翻 来鳴令響 橘之 花乎居令散 終日 雖喧聞吉 幣者将為 遐莫去 吾屋戸之 花橘尓 住度鳥) |
( 2001/10/29 ) (改 2003/10/27 ) |
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