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       ほととぎすの鳴きけるを聞きてよめる 凡河内躬恒  
164   
   郭公  我とはなしに  卯の花の  うき世の中に  鳴き渡るらむ
          
        夏という季節に合わせて 「ホトトギス−卯の花」と出し、「卯の花−憂き世の中」と 「う」でつなげて 「鳴く−泣く」でまとめた歌である。意味は、ホトトギスは、この私でもないのにこのつらい世の中を鳴き渡っているようだ、ということだが、その内容よりも言葉のブロックを組み合わせて楽しんでいるようである。これに対し、貫之も 「世の中を鳴き渡る」という歌として次のような歌を作っている。

 
804   
   初雁の  鳴きこそ渡れ    世の中の   人の心の  秋し 憂ければ  
     
        躬恒の歌は卯の花の白さでイメージを飾り、貫之の歌は雁によって 「鳴き渡る」という空間の広さを演出している。夏のホトトギスと秋の初雁の声の違いも感じられ、二つを並べて見ると面白い。

 
( 2001/10/04 )   
(改 2003/10/31 )   
 
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