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       同じ御時きさいの宮の歌合せのうた 藤原興風  
178   
   契りけむ  心ぞつらき  七夕の  年にひとたび  あふはあふかは
          
        詞書にある 「同じ御時」とは一つ前の 177番の友則の歌の詞書の 「寛平の御時」を指していて「寛平の御時きさいの宮の歌合せの歌」ということ。

  "契りけむ心" というのは、「毎年一度だけ逢う」という約束した心を指している。 「けむ」は過去の推量を表わす助動詞。
そう約束した心はつれないものだ、一年に一回しか逢えないのでは本当に逢うとは言えないではないか、という歌である。

  「つらし」は 「冷淡な」という意味で、そのまま直に見ると、そんな約束をした織姫の心が冷たい、ということになる。しかし、年に一度という取り決めは牽牛・織女が決めたわけではないので、仕方が無くその約束を了承した二人の心が冷めすぎているのではないか、自分だったら絶対に了承しない、というニュアンスであろうか。どちらにしても、後続の歌などを見ると、この歌も 「織姫がかわいそう」という感じではないようである。 「つらし/つらき」という言葉を使った歌の一覧は 624番の歌のページを参照。

  それに対して、一年に一回でも逢えればいいではないか、という躬恒の歌が恋歌二にある。

 
612   
   我のみぞ  かなしかりける  彦星も  あはですぐせる    年しなければ  
     

( 2001/12/10 )   
(改 2003/11/03 )   
 
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