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       題しらず 源宗于  
624   
   あはずして  今宵明けなば  春の日の  長くや人を  つらしと思はむ
          
        今晩逢えないまま夜が明けてしまったとしたなら、長い春の日のようにずっとあなたを薄情だと思って恨みましょう、という歌。

  長いものの譬えとして「秋の夜」ではなく "春の日" をあてていることが特徴だが、すわりが悪いということなのか、
「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0) によると、元永本などの伝本ではここが 「秋のよの」となっているそうである。また永治本という伝本では、"今宵明けなば" が 「こよみあけなば」となっているようで、歌としてはどうかと思うが、虚を突かれるという意味では面白い。

  「つらし/つらき」とは、基本的に 「冷淡な」という意味であり、その言葉を使った歌は、古今和歌集ではこの歌を含め七首と意外に少なく、そのうち 433番と 434番の二つは 「あふひ、かつら」という物名の歌である。

 
     
178番    契りけむ  心ぞつらき 七夕の  藤原興風
433番    いかがつらし  思はざるべき  読人知らず
434番    我がつらきにや  思ひなされむ  読人知らず
624番    長くや人を  つらしと思はむ  源宗于
789番    つらき人より  まづ越えじとて  兵衛
794番    よしや人こそ  つらから  凡河内躬恒
941番    世の中の  うきもつらきも 告げなくに  読人知らず


 
        「つれもなき人/つれなき人」を詠った歌の一覧については 486番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/03/12 )   
 
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