Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻六

       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 藤原興風  
326   
   浦近く  降りくる雪は  白浪の  末の松山  越すかとぞ見る
          
        海辺に近く降りくる雪は、あの「末の松山」を越す白波のように見える、という歌。 1093番の「末の松山 浪も越えなむ」という 「みちのくのうた」を元にしている。ありえないことの譬えとされる 「末の松山を浪が越す」ということも、海辺近く舞う雪を見ていると、それが波となって軽々と越してゆくように見えるよ、ということである。本歌にある、はかない約束が破れる予感と奥行きのあるイメージによって美しい歌となっている。

  「寛平の御時きさいの宮の歌合」は 893年以前に催されたものとされるので、913年の 「亭子院歌合」に出された 89番の「桜花 散りぬる風の なごりには」という貫之の歌は、約二十年の時間を経てこの興風の歌に感応していると見ることもできる。

  「とぞ見る」という表現を使った歌の一覧は 301番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/22 )   
(改 2004/03/09 )   
 
前歌    戻る    次歌