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       返し 兼覧王  
398   
   惜しむらむ  人の心を  知らぬまに  秋の時雨と  身ぞふりにける
          
        この歌は、一つ前の次の貫之の歌に対しての返しであり、それほど慕ってくれる人の心を知らないまま、秋の時雨が降るように、この身はすっかり古くなってしまった、ということ。

 
397   
   秋萩の  花をば雨に  濡らせども  君をばまして  惜しとこそ思へ  
     
        貫之の歌の末尾の 「惜しとこそ思へ」を受けて、 "惜しむらむ" と詠い出している所に即興性と臨場感を感じる。べたべたせずに、さらりとした紳士的な切り返しである。これはおそらく次の小町の歌をベースにしたものだろうが、そこに含まれる 「言葉は変わるものだからね」という軽い皮肉まで入れて返しているのだとしたら、その頭の冴え方は普通ではない。

 
782   
   今はとて  我が身時雨に    ふりぬれば   言の葉さへに  うつろひにけり
     
        「人の心」という言葉を使った歌の一覧については 651番の歌のページを、「時雨」を詠った歌の一覧は 88番の歌のページを参照。

 
( 2001/08/27 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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