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       題しらず 素性法師  
575   
   はかなくて  夢にも人を  見つる夜は  あしたの床ぞ  起きうかりける
          
        はかなくて、夢にもあの人のことを見た夜は、次の朝、床を離れるのがつらい気持ちがする、という歌。 "夢にも" の 「にも」の解釈が微妙で、素直に読めば 「見つる」に掛かり 「現実にも見たが夢にも見た」ということのように見えるが、古今和歌集の配列の流れで言えば、「昼間思っているだけではなく、夢にさえ見た」というようにも見える。

  その点、次の業平の歌は詞書に 「人にあひてあしたによみてつかはしける」とあって、実際に逢った後の夢のはかなさを詠ったものだとわかる。

 
644   
   寝ぬる夜の    夢をはかなみ   まどろめば  いやはかなにも  なりまさるかな
     
        また、はじめの "はかなくて" も、「はかない思いでいたので夢に見た」のか、「夢に見たことが、はかなくて、起きづらい」のか微妙である。この場合はどちらかというと後者のような気がする。 「はかなし」という言葉を使った歌の一覧については 132番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/07 )   
(改 2003/12/26 )   
 
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