巻一 |
0006 |
春たてば 花とや見らむ 白雪の かかれる枝に うぐひすの鳴く |
春歌上 |
巻一 |
0037 |
よそにのみ あはれとぞ見し 梅の花 あかぬ色かは 折りてなりけり |
春歌上 |
巻一 |
0047 |
散ると見て あるべきものを 梅の花 うたて匂ひの 袖にとまれる |
春歌上 |
巻一 |
0055 |
見てのみや 人にかたらむ 桜花 手ごとに折りて いへづとにせむ |
春歌上 |
巻一 |
0056 |
見渡せば 柳桜を こきまぜて みやこぞ春の 錦なりける |
春歌上 |
巻二 |
0076 |
花散らす 風の宿りは 誰か知る 我に教へよ 行きてうらみむ |
春歌下 |
巻二 |
0092 |
花の木も 今はほり植ゑじ 春たてば うつろふ色に 人ならひけり |
春歌下 |
巻二 |
0095 |
いざ今日は 春の山辺に まじりなむ 暮れなばなげの 花のかげかは |
春歌下 |
巻二 |
0096 |
いつまでか 野辺に心の あくがれむ 花し散らずは 千代もへぬべし |
春歌下 |
巻二 |
0109 |
こづたへば おのが羽かぜに 散る花を 誰におほせて ここら鳴くらむ |
春歌下 |
巻二 |
0114 |
惜しと思ふ 心は糸に よられなむ 散る花ごとに ぬきてとどめむ |
春歌下 |
巻二 |
0126 |
おもふどち 春の山辺に うちむれて そことも言はぬ 旅寝してしか |
春歌下 |
巻三 |
0143 |
郭公 初声聞けば あぢきなく 主さだまらぬ 恋せらるはた |
夏歌 |
巻三 |
0144 |
いそのかみ ふるきみやこの 郭公 声ばかりこそ 昔なりけれ |
夏歌 |
巻四 |
0181 |
今宵こむ 人にはあはじ 七夕の 久しきほどに 待ちもこそすれ |
秋歌上 |
巻四 |
0241 |
主知らぬ 香こそ匂へれ 秋の野に たが脱ぎかけし 藤ばかまぞも |
秋歌上 |
巻四 |
0244 |
我のみや あはれと思はむ きりぎりす 鳴く夕影の 大和撫子 |
秋歌上 |
巻五 |
0273 |
濡れてほす 山路の菊の 露の間に いつか千歳を 我はへにけむ |
秋歌下 |
巻五 |
0293 |
もみぢ葉の 流れてとまる みなとには 紅深き 浪や立つらむ |
秋歌下 |
巻五 |
0309 |
もみぢ葉は 袖にこき入れて もていでなむ 秋はかぎりと 見む人のため |
秋歌下 |
巻七 |
0353 |
いにしへに ありきあらずは 知らねども 千歳のためし 君にはじめむ |
賀歌 |
巻七 |
0354 |
ふして思ひ おきて数ふる 万代は 神ぞ知るらむ 我が君のため |
賀歌 |
巻七 |
0356 |
万代を 松にぞ君を 祝ひつる 千歳のかげに 住まむと思へば |
賀歌 |
巻七 |
0357 |
春日野に 若菜つみつつ 万代を 祝ふ心は 神ぞ知るらむ |
賀歌 |
巻九 |
0421 |
たむけには つづりの袖も 切るべきに 紅葉にあける 神やかへさむ |
羇旅歌 |
巻十一 |
0470 |
音にのみ きくの白露 夜はおきて 昼は思ひに あへずけぬべし |
恋歌一 |
巻十二 |
0555 |
秋風の 身に寒ければ つれもなき 人をぞたのむ 暮るる夜ごとに |
恋歌二 |
巻十二 |
0575 |
はかなくて 夢にも人を 見つる夜は あしたの床ぞ 起きうかりける |
恋歌二 |
巻十四 |
0691 |
今こむと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ちいでつるかな |
恋歌四 |
巻十四 |
0714 |
秋風に 山の木の葉の うつろへば 人の心も いかがとぞ思ふ |
恋歌四 |
巻十四 |
0722 |
そこひなき 淵やは騒ぐ 山川の 浅き瀬にこそ あだ浪はたて |
恋歌四 |
巻十五 |
0799 |
思ふとも かれなむ人を いかがせむ あかず散りぬる 花とこそ見め |
恋歌五 |
巻十五 |
0802 |
忘れ草 何をか種と 思ひしは つれなき人の 心なりけり |
恋歌五 |
巻十六 |
0830 |
血の涙 落ちてぞたぎつ 白川は 君が世までの 名にこそありけれ |
哀傷歌 |
巻十八 |
0947 |
いづこにか 世をばいとはむ 心こそ 野にも山にも 惑ふべらなれ |
雑歌下 |
巻十九 |
1012 |
山吹の 花色衣 主や誰 問へど答へず くちなしにして |
雑体 |