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       題しらず 読人知らず  
648   
   小夜ふけて  天の門渡る  月影に  あかずも君を  あひ見つるかな
          
     
  • 小夜 ・・・ 夜の歌語
  • 天の門 ・・・ 空の歌語
  
夜が更けて空を渡る月の光の下、飽きることなく愛し合ったものだ、という歌。

  恋歌四の恋の充実を詠う歌群の中にも 682番の読人知らずの「かくこそは見め あかずもあるかな」という歌や、 684番の友則の「見れどもあかぬ 君にもあるかな」という歌と雰囲気が似ているが、契沖が「古今余材抄」で 「
下の句の心後朝によみて贈れる歌にてこゝに入たるなるへし」と述べているように、恋歌三というこの歌の位置を考えに入れると、前夜のことを思い出しての歌という感じであろう。 「あかず」という言葉を使った歌の一覧は 157番の歌のページを参照。 「あひ見る」ということを詠った歌の一覧については 97番の歌のページを参照。

  なお、本居宣長は「古今和歌集遠鏡」で、この歌について、「
三の句のは。ゝあやまりにて。上句はあかずの序なるべし。萬葉に例多し。」と書いている。 「に」が 「の」の誤りかどうか、また三句目までが序詞かどうかは別として、「萬葉に例多し」というのは次のような歌を指していると思われる。

  [巻四495]       朝日影 にほへる山に 照る月の 飽かざる君を 山越しに置きて
  [巻十二3207]  あらたまの 年の緒長く 照る月の 飽かざる君や 明日別れなむ
  [巻二十4312]  秋草に 置く白露の 飽かずのみ 相見るものを 月をし待たむ

  ちなみに
「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0) で見る限り、この 「天の門」の歌が 「月影の」となっている伝本はないようである。

 
( 2001/11/29 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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