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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 壬生忠岑  
157   
   くるるかと  見れば明けぬる  夏の夜を  あかずとや鳴く  山郭公
          
     
  • あかず ・・・ 満足できない
  
暮れたかと思うとすぐに明けてしまう夏の夜を、物足りないとしてホトトギスは鳴いているのか、という歌。夏の夜の短さは二人で過す時間の短さであり、それをホトトギスの声に寄せて詠った恋歌として見ることも出来る。また、言葉としては 「明く−飽く」の遊びがあるように見える。

  最後の "山郭公" のはおそらく字数合わせのためであろうが、山の東側の斜面を考えれば、そこは夕べは山の影によって暗くなるのが早く、朝は東から昇る陽の光が当たるのが早い。そのようなイメージも含めているのかもしれない。

  「あかず(飽かず)/あかで(飽かで)/あかなくに(飽かなくに)」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
        [あかず]  
     
157番    あかずとや鳴く  山郭公  壬生忠岑
359番    ここらの年を  あかずもあるかな  紀友則
374番    あかず別るる  君をとどめよ  難波万雄
396番    あかずして  別るる涙 滝にそふ  兼芸法師
400番    あかずして  別るる袖の 白玉を  読人知らず
464番    あかず散らしし  風なれば  読人知らず
648番    あかずも君を  あひ見つるかな  読人知らず
682番    かくこそは見め  あかずもあるかな  読人知らず
799番    あかず散りぬる  花とこそ見め  素性法師
883番    あかずして  月の隠るる 山もとは  読人知らず
992番    あかざり  袖の中にや 入りにけむ  陸奥
1002番    あかずして  わかるる涙  紀貫之


 
        [あかで]  
     
238番    花にあかで  何かへるらむ 女郎花  平貞文
404番    あかでも人に  別れぬるかな  紀貫之
717番    あかでこそ  思はむなかは 離れなめ  読人知らず


 
        [あかなくに]  
     
122番    春雨に  匂へる色も あかなくに  読人知らず
884番    あかなくに  まだきも月の 隠るるか  在原業平


 
( 2001/10/02 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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