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       題しらず 藤原因香  
738   
   玉ぼこの  道はつねにも  惑はなむ  人をとふとも  我かと思はむ
          
     
  • 玉ぼこの ・・・ 道に掛かる枕詞
  
道にはいつも迷ってほしい、他人を訪ねても、自分を訪ねてきたのかと思いましょう、という歌だが意味がわかりづらい。

  古今和歌集の配置を見ると、736番で因香の「言の葉今は かへしてむ」という昔の文を返す別れの歌があって、それに答える 「おのがものから 形見とや見む」という源能有(よしあり)があった後、再びこの因香の歌が置かれている。前の贈答歌が文関係であることと、「古今六帖」ではこの歌が 「文違へ」の分類に入っていることから、手紙を届ける使者に 「道を間違えて自分のところに来て欲しい」と言っているとする説もあるが、やや無理がある。やはりここは、たまに顔を出した相手に対して 「来るところが違うのではないですか」と言っているか、相手が名前を呼び間違えたことを皮肉っているようなニュアンスであると見た方が自然に思える。

  「道に惑ふ」という歌としては次の友則のホトトギスの歌が思い出される。

 
154   
   夜や暗き  道や惑へる   郭公  我が宿をしも  すぎがてに鳴く
     

( 2001/12/11 )   
(改 2004/01/15 )   
 
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