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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 紀友則  
154   
   夜や暗き  道や惑へる  郭公  我が宿をしも  すぎがてに鳴く
          
     
  • すぎがてに ・・・ 通りすぎづらい様子で
  
光のない闇夜を嫌ってか、あるいは道に迷ったのか、ホトトギスが我が家の庭を去り難い様子で鳴いている、という歌。しつこいぐらいに鳴くホトトギスの声を 「すぎがて」と見たところがこの歌の起点であろう。寛平御時后宮歌合では最後が「すぎがてにする」となっており、そちらの方が音としてはすっきりとした感じである。姿が見えず声のみ聞こえる、というニュアンスを出すために 「鳴く」としたものか。 「がてに」という言葉を使った歌の一覧は 75番の歌のページを参照。

  歌の背景には、物思いにふけっているこの家の灯りだけがついている、という状況があるように思える。一つ前の 153番の歌ではホトトギスが五月雨の中を飛び去ってゆくイメージを詠っているが、夜中に家にいてその声を聞くという点では共通している。

  また、 "我が宿をしも" という表現には、こんな何の取り柄のない我が家の庭でも、というニュアンスがありそうである。実景かどうかはともかく、友則が 「我が宿」と詠んだものに、442番の物名の歌や 564番の恋歌があり、同じ庭だと想像して見るのも面白いかもしれない。

 
( 2001/12/11 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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