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       はちすの露を見てよめる 僧正遍照  
165   
   はちす葉の  にごりにしまぬ  心もて  何かは露を  珠とあざむく
          
     
  • はちす葉 ・・・ ハスの葉
  • しまぬ ・・・ 染まらない (染まぬ)
  
ハスの葉は泥水の中にあっても汚れないという心を持ちながら、どうして露を美しい珠と欺くのか、という歌。花を詠まずに葉の露を詠むというのは地味な感じもするが、法華経などの蓮華(=ハスの花)が汚れた所でもそれに染まらず美しい花を咲かせるという話を背景にして、 "にごりにしまぬ  心もて" という言葉の裏に花を見せているとも考えられる。

  また、露は涙を連想させ、この歌を「涙を珠とあざむく」と見れば、他の遍照(=良岑宗貞)の 「香をだにぬすめ」という 91番の歌や、「我おちにき」という 226番の女郎花の歌などと同じく、どこか艶っぽい感じがしないでもない。同じ遍照の 「露」の歌では次の歌も美しく、蓮の円に対して柳の線、蓮のブローチに対して柳のネックレスという感じがする。

 
27   
   浅緑  糸よりかけて  白露を   珠にもぬける  春の柳か  
     

( 2001/09/12 )   
(改 2003/10/31 )   
 
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