題しらず | 読人知らず | |||
174 |
|
年に一度、七月七日に牽牛(彦星)と織女(織姫)が天の川を渡って逢うという七夕伝説を題材にした歌であり、天の河原の渡し守よ、あの方が渡ってきたならば、帰らないように梶(かじ)を隠してほしい、と織女の立場で詠ったものである。 渡し守のいる舟で天の河を渡ってくるというのはどことなく貧乏くさいような気もするが、忍びに通う恋という見立てであろう。 863番の歌にも天の河を渡る舟の歌として「と渡る舟の 櫂のしづくか」というものがあり、その 「櫂(かい)」はこの歌の "かぢ" と同じものとされる。舟の後ろに取り付けて漕ぐ道具である。 七月七日は旧暦では秋になるので、この歌を含む十一首の七夕関係の歌は、秋歌上の部に置かれている。それは次の読人知らずの歌からはじまっている。 |
173 |
|
|||||||
「久方の 天の河原」という同じフレーズを使った歌が隣同士に置かれているが、歌の中での位置が異なるのでくどさがない。全般的に古今和歌集では同じフレーズを同じ位置に持つ歌をあまり続けない傾向がある。そのため、歌のサンプル量の違いもあるだろうが、「秋の夕暮」の体言止めを容赦なく並べる新古今和歌集と比べると心配りがあるように感じることもある。 「久方の」という枕詞を使った歌の一覧は 269番の歌のページを参照。 |
( 2001/08/27 ) (改 2004/03/12 ) |
前歌 戻る 次歌 |