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       僧正遍照がもとに奈良へまかりける時に、男山にて女郎花を見てよめる 布留今道  
227   
   女郎花  憂しと見つつぞ  ゆきすぐる  男山にし  立てりと思へば
          
        作者の布留今道(ふるのいまみち)は生没年不明、882年に従五位下。 「男山」は京都府八幡市の石清水八幡宮のある山で、現在も 「男山展望台」がある。

  歌の意味は、
私はオミナエシを嫌な感じ(の女)だと見ながら通り過ぎてきました、男山に立っているわけですから、ということ。 "立てり" という言葉について、賀茂真淵「古今和歌集打聴」では「たてりは生(おひ)立て有の上を略(はぶ)ける也」としている。他に植物が「立つ」という表現を使っている歌としては、237番の「荒れたる宿に ひとり立てれば」、272番「吹き上げに立てる 白菊は」、908番「尾上に立てる 松ならなくに」などがある。

  またこの歌は、詞書にある遍照の 226番の「名にめでて 折れるばかりぞ 女郎花」という歌と並べられていて、そこで 「名にめでて折れる/我おちにき」と詠っている遍照に対して、自分は "憂しと見つつぞ  ゆきすぐる" と当てているように見える。おそらく遍照のオミナエシの歌を知った上の歌であろう。

  古今和歌集の中で 「男山」という地名を使った歌としては、他に次の読人知らずの歌がある。

 
889   
   今こそあれ  我も昔は  男山   さかゆく時も  ありこしものを
     

( 2001/11/01 )   
(改 2003/11/12 )   
 
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