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       これさだのみこの家の歌合せによめる 壬生忠岑  
263   
   雨降れば  笠取り山の  もみぢ葉は  行きかふ人の  袖さへぞてる
          
        雨によって紅葉の色が増し、行き交う人の袖さへ輝く、という歌。最後の "てる" (照る)は自動詞で、袖が照るということだが、 "もみぢ葉は"の「は」が少し不安定な感じもする。ただこれを「に」に変えると今度は "さへ" の比較が揺らいでしまうので難しいところである。紅葉ばかりか人の袖さえ照る、ということであろう。

  笠取山は現在の京都府伏見区の醍醐山か。 874年に理源(りげん)大師・聖宝( しょうぼう)が醍醐寺を開創し、876年に名を醍醐山と改めるまでは笠取山と呼ばれていたと言われる。「是貞親王の家の歌合」が行なわれたとされる892年ごろにはすでに名前が変わっていたことになるが、この歌の "ゆきかふ人" というのは醍醐山の麓の醍醐寺に参詣する人という感じもする。ただし、醍醐寺が勅願寺(=鎮護国家のための天皇の寺)となったのは907年。

  「笠取山」を詠った歌としては他に在原元方の次の歌がある。

 
261   
   雨降れど  露ももらじを  笠取りの    山 はいかでか  もみぢ染めけむ
     
        「さへぞ」という言葉を使った歌の一覧は 146番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/04 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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