巻一 |
0011 |
春きぬと 人は言へども うぐひすの 鳴かぬかぎりは あらじとぞ思ふ |
春歌上 |
巻三 |
0157 |
くるるかと 見れば明けぬる 夏の夜を あかずとや鳴く 山郭公 |
夏歌 |
巻三 |
0163 |
昔べや 今も恋しき 郭公 ふるさとにしも 鳴きてきつらむ |
夏歌 |
巻四 |
0183 |
今日よりは 今こむ年の 昨日をぞ いつしかとのみ 待ち渡るべき |
秋歌上 |
巻四 |
0194 |
久方の 月の桂も 秋はなほ もみぢすればや 照りまさるらむ |
秋歌上 |
巻四 |
0214 |
山里は 秋こそことに わびしけれ 鹿の鳴く音に 目を覚ましつつ |
秋歌上 |
巻四 |
0235 |
人の見る ことやくるしき 女郎花 秋霧にのみ 立ち隠るらむ |
秋歌上 |
巻四 |
0236 |
ひとりのみ ながむるよりは 女郎花 我が住む宿に 植ゑて見ましを |
秋歌上 |
巻五 |
0258 |
秋の夜の 露をば露と 置きながら 雁の涙や 野辺を染むらむ |
秋歌下 |
巻五 |
0263 |
雨降れば 笠取り山の もみぢ葉は 行きかふ人の 袖さへぞてる |
秋歌下 |
巻五 |
0296 |
神なびの みむろの山を 秋ゆけば 錦たちきる 心地こそすれ |
秋歌下 |
巻五 |
0306 |
山田もる 秋のかりいほに 置く露は いなおほせ鳥の 涙なりけり |
秋歌下 |
巻六 |
0327 |
み吉野の 山の白雪 踏みわけて 入りにし人の おとづれもせぬ |
冬歌 |
巻六 |
0328 |
白雪の 降りてつもれる 山里は 住む人さへや 思ひ消ゆらむ |
冬歌 |
巻七 |
0361 |
千鳥鳴く 佐保の河霧 立ちぬらし 山の木の葉も 色まさりゆく |
賀歌 |
巻十 |
0425 |
袂より はなれて玉を つつまめや これなむそれと うつせ見むかし |
物名 |
巻十 |
0462 |
夏草の 上はしげれる 沼水の 行く方のなき 我が心かな |
物名 |
巻十一 |
0478 |
春日野の 雪間をわけて おひいでくる 草のはつかに 見えし君はも |
恋歌一 |
巻十二 |
0566 |
かきくらし 降る白雪の 下ぎえに 消えて物思ふ ころにもあるかな |
恋歌二 |
巻十二 |
0586 |
秋風に かきなす琴の 声にさへ はかなく人の 恋しかるらむ |
恋歌二 |
巻十二 |
0592 |
たぎつ瀬に 根ざしとどめぬ 浮草の 浮きたる恋も 我はするかな |
恋歌二 |
巻十二 |
0601 |
風吹けば 峰にわかるる 白雲の 絶えてつれなき 君が心か |
恋歌二 |
巻十二 |
0602 |
月影に 我が身をかふる ものならば つれなき人も あはれとや見む |
恋歌二 |
巻十二 |
0609 |
命にも まさりて惜しく あるものは 見はてぬ夢の さむるなりけり |
恋歌二 |
巻十三 |
0625 |
有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし |
恋歌三 |
巻十三 |
0628 |
陸奥に ありと言ふなる 名取川 なき名とりては くるしかりけり |
恋歌三 |
巻十六 |
0835 |
寝るが内に 見るをのみやは 夢と言はむ はかなき世をも うつつとは見ず |
哀傷歌 |
巻十六 |
0836 |
瀬をせけば 淵となりても 淀みけり 別れを止むる しがらみぞなき |
哀傷歌 |
巻十六 |
0839 |
時しもあれ 秋やは人の 別るべき あるを見るだに 恋しきものを |
哀傷歌 |
巻十六 |
0841 |
藤衣 はつるる糸は わび人の 涙の玉の 緒とぞなりける |
哀傷歌 |
巻十六 |
0843 |
墨染めの 君が袂は 雲なれや 絶えず涙の 雨とのみ降る |
哀傷歌 |
巻十七 |
0917 |
住吉と 海人は告ぐとも 長居すな 人忘れ草 おふと言ふなり |
雑歌上 |
巻十七 |
0928 |
落ちたぎつ 滝の水上 年つもり 老いにけらしな 黒き筋なし |
雑歌上 |
巻十九 |
1003 |
呉竹の 世よのふること なかりせば いかほの沼の いかにして ... |
雑体 |
巻十九 |
1004 |
君が代に あふ坂山の 岩清水 こ隠れたりと 思ひけるかな |
雑体 |
巻十九 |
1036 |
隠れ沼の 下よりおふる ねぬなはの ねぬなは立てじ くるないとひそ |
雑体 |