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       題しらず 読人知らず  
146   
   郭公  鳴く声聞けば  別れにし  ふるさとさへぞ  恋しかりける
          
        ホトトギスの鳴く声を聞けば、別れてきた古里さえ、恋しく思われる、という歌。

  この歌の中で目立つ言葉は " 別れにし" と "ふるさとさへぞ" の 「さへ」である。 " 別れにし" は最後の "恋しかりける" を伴って 「人との別れ」を思わせ、それに 「さへ」が加わることにより、別れた人(々)が恋しくなるのはもちろんのこと、その場所までもが恋しい、という感じにも見てとれる。あるいは、もう縁が切れた場所や人(々)だけれども、ホトトギスの声を聞くと何故か恋しく思い出される、という感じか。さらに想像を進めれば、「別れ」は死別であり、すでに亡くなってしまった人(々)との暮らしが懐かしく思い出される、というようにもとれる。

  「さへぞ」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
146番    ふるさとさへぞ  恋しかりける  読人知らず
190番    寝て明かすらむ  人さへぞうき  凡河内躬恒
263番    行きかふ人の  袖さへぞてる  壬生忠岑
299番    住む我さへぞ  旅心地する  紀貫之


 
        「さへ」を使った歌の一覧については 122番の歌のページを参照。

  また、「ふるさと−ホトトギス」を詠ったものとしては、次の忠岑の歌もある。遠くから過去を思うこの歌に対して、忠岑の歌は "ふるさと" の中に身を置いての歌である。

 
163   
   昔べや  今も恋しき  郭公    ふるさとにしも   鳴きてきつらむ
     
        「恋しかりける」という表現を使った歌の一覧は 991番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/22 )   
(改 2004/02/23 )   
 
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