秋のうたとてよめる | 坂上是則 | |||
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佐保山の 「ははそ」の葉の色は薄いけれど、秋は深まってきた、という歌。 「ははその色が薄い」とは、ナラなどの葉の黄色い色を指しているのか、黄葉(あるいは紅葉)が本格化していないことを指しているのか、あるいは霧がかかって薄っすらとして見えるのか、特定しづらい。この歌では 「薄い−深い」であるが、「薄い−濃い」を対比させたものとして、876番の友則の「蝉の羽の 夜の衣は 薄けれど」という歌と並べて見たい。 この歌のシンプルさと余韻は、「なる」というつながりもあって、同じ是則の 325番の歌の「ふるさと寒く なりまさるなり」という歌と共通するものがあり、実はこの歌もすばらしい名歌であるような気がする。ちなみに、古今和歌集の中で 「なりにけるかな」という言葉を使った歌は次の通り。 |
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また詞書には書かれていないが、この歌は現存する 「左兵衛定文歌合」(905年)に残っている。そして現存する 「亭子院歌合」(913年)にあり、「続古今集」(1265年)の巻一159番に是則のものとして採られている次のような歌がある。 水底に しづめる花の 影見れば 春は深くも なりにけるかな これはなかなか微妙である。四句目が春に変わっているだけでなく、作りが異なるので比較はしづらいが、やはり 「秋」の歌の方がシンプルで好ましい。 |
( 2001/11/13 ) (改 2003/11/18 ) |
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