Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻八

       大江のちふるが越へまかりけるむまのはなむけによめる 藤原兼輔  
391   
   君がゆく  越の白山  知らねども  雪のまにまに  あとはたづねむ
          
     
  • まにまに ・・・ ままに・まかせて
  • あと ・・・ 跡・行方
  詞書にある 「大江のちふる」(大江千古)は大江千里の弟。生年不詳、924年没。古今和歌集に採られている歌はないが、後撰和歌集に冬歌と恋歌の二つの歌があり、新古今和歌集の神祇歌には906年の「日本紀竟宴」の時の彼の歌が収められている。「むまのはなむけ」は送別のこと。

  藤原兼輔は 877年生まれ、933年没。没年五十七歳。 902年従五位下、906年従五位上、915年正五位下、917年従四位下、921年参議、922年従四位上、927年従三位中納言。堤中納言と呼ばれた。紫式部の曾祖父。古今和歌集にはこの歌も含めて四首が採られている。

  
あなたが行く越の国、白山の様子は知りませんが、雪のままに跡を尋ねてゆきましょう、という歌。 「白山−知らねど」と続けて「雪−行き」を掛けている。 "雪のまにまに  あとはたづねむ" とは、雪に残ったあなたの足跡を訪ねて、という意味だろう。

  同じ 「越の白山−知らねど」を使ったものに 980番の貫之の「思ひやる 越の白山 知らねども」という歌があり、「白山・ゆく−雪」という組み合わせでは次の躬恒の歌がある。

 
383   
   よそにのみ  恋ひや渡らむ  白山の    雪見るべくも   あらぬ我が身は
     
        「越/白山/雪」という題材は一度見てしまうともう新鮮味がないが、貫之、躬恒の歌と並べてもこの兼輔の歌は姿で劣っておらず、むしろ一番安定した形のように思える。 「白山」を詠った歌の一覧は 383番の歌のページを参照。

  また、「まにまに」という言葉が使われている歌には、129番の深養父の歌などがあり、特に 「水のまにまに  とめくれば」という深養父の歌は、どこかこの兼輔の歌に通じるものが感じられる。

 
( 2001/09/17 )   
(改 2004/02/09 )   
 
前歌    戻る    次歌