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       越なりける人につかはしける 紀貫之  
980   
   思ひやる  越の白山  知らねども  ひと夜も夢に  越えぬ夜ぞなき
          
     
  • 思ひやる ・・・ 思いを馳せる (思ひ遣る)
  
あなたのいる越の国の白山の様子は知りませんが、いつも思いを馳せているので、ひと夜も夢にそれを越えない日はありません、という歌。

  「白山」を詠った歌の一覧は 383番の歌のページを参照。この歌は次の藤原兼輔の歌と同じ 「越の白山−知らねど」という言葉を使っており、兼輔の歌が離別歌として送別の意味を表わしているのに対し、貫之の方は遠方の知人への見舞いの気持ちを表わしている。

 
391   
   君がゆく  越の 白山    知らねども   雪のまにまに  あとはたづねむ
     
        兼輔の歌が 「ゆくー雪のまにまに」と 「雪」に 「行き」を合わせているのに対し、貫之の方も 「越−越えぬ」と見せている。同じ言葉の反復という点では、貫之のこの歌は、「ひと夜−夜ぞなき」と 「夜」を繰り返しているが、これがどことなく拙い感じがしたものか、この歌を再録している 「拾遺和歌集」では 「日ぞなき」というバージョンを採用している (雑恋1242)。

 
( 2001/08/14 )   
(改 2004/02/09 )   
 
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