Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻九

       これたかのみこのともにかりにまかりける時に、あまの川といふ所の川のほとりにおりゐて酒などのみけるついでに、みこのいひけらく、かりして天の河原にいたるといふ心をよみて盃はさせ、といひければよめる 在原業平  
418   
   かりくらし  七夕つめに  宿からむ  天の河原に  我はきにけり
          
     
  • かりくらし ・・・ 狩をして一日を過して (狩り暮す)
  • 七夕つめ ・・・ 織姫
  詞書の意味は「惟喬親王のお供で狩りに出かけた時、天の川という川のほとりで酒宴を開いた。その時に親王が「狩りをして天の河原に至る」ということを題にして歌を作って盃をすすめよ、と言われたので詠んだ」歌ということ。この 「天の川」は現在の大阪府枚方(ひらかた)市を流れる天野川のことであると言われている。

  歌の内容は、
狩をして日を過ごし、さあ今は織姫に宿でも借りようか、天の河原に来たからには、ということ。 「狩り」から 「借り」へとつなげている。シンプルな発想だが、これにより 「狩りをして天の河原に至る」という題から作られたこの歌が、今度は 「天の河で宿をとる」という題を提示していることにもなり、それを紀有常が、続く419番の歌でうまく掬い上げるというかたちになっている。

  古今和歌集の中で他に 「七夕つめ」という言葉の出てくる歌には、次の読人知らずの歌がある。

 
175   
   天の河   紅葉を橋に  わたせばや  七夕つめの   秋をしも待つ
     

( 2001/11/15 )   
(改 2003/12/10 )   
 
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