巻一 |
0053 |
世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし |
春歌上 |
巻一 |
0063 |
今日こずは 明日は雪とぞ 降りなまし 消えずはありとも 花と見ましや |
春歌上 |
巻二 |
0133 |
濡れつつぞ しひて折りつる 年の内に 春はいくかも あらじと思へば |
春歌下 |
巻五 |
0268 |
植ゑし植ゑば 秋なき時や 咲かざらむ 花こそ散らめ 根さへ枯れめや |
秋歌下 |
巻五 |
0294 |
ちはやぶる 神世もきかず 竜田川 唐紅に 水くくるとは |
秋歌下 |
巻七 |
0349 |
桜花 散りかひくもれ 老いらくの 来むと言ふなる 道まがふがに |
賀歌 |
巻九 |
0410 |
唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ |
羇旅歌 |
巻九 |
0411 |
名にしおはば いざ言問はむ みやこ鳥 我が思ふ人は ありやなしやと |
羇旅歌 |
巻九 |
0418 |
かりくらし 七夕つめに 宿からむ 天の河原に 我はきにけり |
羇旅歌 |
巻十一 |
0476 |
見ずもあらず 見もせぬ人の 恋しくは あやなく今日や ながめくらさむ |
恋歌一 |
巻十三 |
0616 |
起きもせず 寝もせで夜を 明かしては 春のものとて ながめくらしつ |
恋歌三 |
巻十三 |
0618 |
浅みこそ 袖はひつらめ 涙川 身さへ流ると 聞かばたのまむ |
恋歌三 |
巻十三 |
0622 |
秋の野に 笹わけし朝の 袖よりも あはでこし夜ぞ ひちまさりける |
恋歌三 |
巻十三 |
0632 |
人知れぬ 我がかよひぢの 関守は よひよひごとに うちも寝ななむ |
恋歌三 |
巻十三 |
0644 |
寝ぬる夜の 夢をはかなみ まどろめば いやはかなにも なりまさるかな |
恋歌三 |
巻十三 |
0646 |
かきくらす 心の闇に 惑ひにき 夢うつつとは 世人さだめよ |
恋歌三 |
巻十四 |
0705 |
かずかずに 思ひ思はず とひがたみ 身を知る雨は 降りぞまされる |
恋歌四 |
巻十四 |
0707 |
おほぬさと 名にこそたてれ 流れても つひによる瀬は ありてふものを |
恋歌四 |
巻十五 |
0747 |
月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ 我が身ひとつは もとの身にして |
恋歌五 |
巻十五 |
0785 |
行きかへり 空にのみして ふることは 我がゐる山の 風はやみなり |
恋歌五 |
巻十六 |
0861 |
つひにゆく 道とはかねて 聞きしかど 昨日今日とは 思はざりしを |
哀傷歌 |
巻十七 |
0868 |
紫の 色濃き時は めもはるに 野なる草木ぞ 別れざりける |
雑歌上 |
巻十七 |
0871 |
大原や をしほの山も 今日こそは 神世のことも 思ひいづらめ |
雑歌上 |
巻十七 |
0879 |
おほかたは 月をもめでじ これぞこの つもれば人の 老いとなるもの |
雑歌上 |
巻十七 |
0884 |
あかなくに まだきも月の 隠るるか 山の端逃げて 入れずもあらなむ |
雑歌上 |
巻十七 |
0901 |
世の中に さらぬ別れの なくもがな 千代もとなげく 人の子のため |
雑歌上 |
巻十七 |
0923 |
ぬき乱る 人こそあるらし 白玉の まなくも散るか 袖のせばきに |
雑歌上 |
巻十八 |
0969 |
今ぞ知る 苦しきものと 人待たむ 里をばかれず 問ふべかりけり |
雑歌下 |
巻十八 |
0970 |
忘れては 夢かとぞ思ふ 思ひきや 雪踏みわけて 君を見むとは |
雑歌下 |
巻十八 |
0971 |
年をへて 住みこし里を いでていなば いとど深草 野とやなりなむ |
雑歌下 |