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       女郎花 紀友則  
438   
   朝露を  わけそほちつつ  花見むと  今ぞ野山を  みなへしりぬる
          
     
  • そほち ・・・ 濡れる (濡つ)
  • へしりぬる ・・・ 通って知る (経知りぬる)
  「いまぞのやま
ヲ ミナヘシりぬる」に題の 「女郎花」が含まれる物名の歌だが、現在の感覚で読むと "みなへしりぬる" (皆・経・知りぬる)の部分が見苦しく、一つ前の 437番の歌に続けて同じ友則の歌で 「をへし」と使った同類の歌を続けて置いている意図がわからない。 439番の貫之の女郎花の折句を出すのに、その前に一枚では薄いので、探したけれど適当なものがなかったためにこの歌を入れた、とも考えられなくはないが、逆に貫之の折句の歌は物名の部にあって、それ以外の物名の歌のパターンとは外れているので、その線もなさそうである。存在理由がわからないという意味で、不思議な歌である。

  歌の意味は、
花を見ようと、朝露を分け、それに濡れながらも歩きまわっていたので、今では野山の様子はすべて通ってわかっている、ということ。

  花の物名の歌の中で 「花見むと」という言葉が使われている例は、 441番の 「しをに」の歌にも見ることができる。

 
( 2001/12/06 )   
(改 2003/12/15 )   
 
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