巻一 |
0013 |
花の香を 風のたよりに たぐへてぞ うぐひすさそふ しるべにはやる |
春歌上 |
巻一 |
0038 |
君ならで 誰にか見せむ 梅の花 色をも香をも 知る人ぞ知る |
春歌上 |
巻一 |
0057 |
色も香も 同じ昔に さくらめど 年ふる人ぞ あらたまりける |
春歌上 |
巻一 |
0060 |
み吉野の 山辺にさける 桜花 雪かとのみぞ あやまたれける |
春歌上 |
巻二 |
0084 |
久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ |
春歌下 |
巻三 |
0142 |
音羽山 今朝越えくれば 郭公 梢はるかに 今ぞ鳴くなる |
夏歌 |
巻三 |
0153 |
五月雨に 物思ひをれば 郭公 夜深く鳴きて いづち行くらむ |
夏歌 |
巻三 |
0154 |
夜や暗き 道や惑へる 郭公 我が宿をしも すぎがてに鳴く |
夏歌 |
巻四 |
0177 |
天の河 浅瀬しら浪 たどりつつ 渡りはてねば 明けぞしにける |
秋歌上 |
巻四 |
0207 |
秋風に 初雁がねぞ 聞こゆなる たがたまづさを かけてきつらむ |
秋歌上 |
巻五 |
0265 |
誰がための 錦なればか 秋霧の 佐保の山辺を 立ち隠すらむ |
秋歌下 |
巻五 |
0270 |
露ながら 折りてかざさむ 菊の花 老いせぬ秋の 久しかるべく |
秋歌下 |
巻五 |
0274 |
花見つつ 人待つ時は 白妙の 袖かとのみぞ あやまたれける |
秋歌下 |
巻五 |
0275 |
ひともとと 思ひし菊を 大沢の 池の底にも 誰か植ゑけむ |
秋歌下 |
巻六 |
0337 |
雪降れば 木ごとに花ぞ 咲きにける いづれを梅と わきて折らまし |
冬歌 |
巻七 |
0359 |
めづらしき 声ならなくに 郭公 ここらの年を あかずもあるかな |
賀歌 |
巻八 |
0405 |
下の帯の 道はかたがた 別るとも 行きめぐりても あはむとぞ思ふ |
離別歌 |
巻十 |
0431 |
み吉野の 吉野の滝に 浮かびいづる 泡をかたまの 消ゆと見つらむ |
物名 |
巻十 |
0437 |
白露を 玉にぬくとや ささがにの 花にも葉にも いとをみなへし |
物名 |
巻十 |
0438 |
朝露を わけそほちつつ 花見むと 今ぞ野山を みなへしりぬる |
物名 |
巻十 |
0440 |
秋ちかう 野はなりにけり 白露の おける草葉も 色かはりゆく |
物名 |
巻十 |
0442 |
我が宿の 花ふみしだく とりうたむ 野はなければや ここにしもくる |
物名 |
巻十二 |
0561 |
宵の間も はかなく見ゆる 夏虫に 惑ひまされる 恋もするかな |
恋歌二 |
巻十二 |
0562 |
夕されば 蛍よりけに もゆれども 光見ねばや 人のつれなき |
恋歌二 |
巻十二 |
0563 |
笹の葉に 置く霜よりも ひとり寝る 我が衣手ぞ さえまさりける |
恋歌二 |
巻十二 |
0564 |
我が宿の 菊の垣根に 置く霜の 消えかへりてぞ 恋しかりける |
恋歌二 |
巻十二 |
0565 |
川の瀬に なびく玉藻の み隠れて 人に知られぬ 恋もするかな |
恋歌二 |
巻十二 |
0593 |
よひよひに 脱ぎて我が寝る かり衣 かけて思はぬ 時の間もなし |
恋歌二 |
巻十二 |
0594 |
東ぢの 小夜の中山 なかなかに なにしか人を 思ひそめけむ |
恋歌二 |
巻十二 |
0595 |
しきたへの 枕の下に 海はあれど 人をみるめは おひずぞありける |
恋歌二 |
巻十二 |
0596 |
年をへて 消えぬ思ひは ありながら 夜の袂は なほこほりけり |
恋歌二 |
巻十二 |
0607 |
ことにいでて 言はぬばかりぞ みなせ川 下にかよひて 恋しきものを |
恋歌二 |
巻十二 |
0615 |
命やは なにぞは露の あだものを あふにしかへば 惜しからなくに |
恋歌二 |
巻十三 |
0661 |
紅の 色にはいでじ 隠れ沼の 下にかよひて 恋は死ぬとも |
恋歌三 |
巻十三 |
0667 |
下にのみ 恋ふれば苦し 玉の緒の 絶えて乱れむ 人なとがめそ |
恋歌三 |
巻十三 |
0668 |
我が恋を しのびかねては あしひきの 山橘の 色にいでぬべし |
恋歌三 |
巻十四 |
0684 |
春霞 たなびく山の 桜花 見れどもあかぬ 君にもあるかな |
恋歌四 |
巻十四 |
0715 |
蝉の声 聞けばかなしな 夏衣 薄くや人の ならむと思へば |
恋歌四 |
巻十五 |
0753 |
雲もなく なぎたる朝の 我なれや いとはれてのみ 世をばへぬらむ |
恋歌五 |
巻十五 |
0787 |
秋風は 身をわけてしも 吹かなくに 人の心の 空になるらむ |
恋歌五 |
巻十五 |
0792 |
水の泡の 消えてうき身と 言ひながら 流れてなほも たのまるるかな |
恋歌五 |
巻十五 |
0827 |
浮きながら けぬる泡とも なりななむ 流れてとだに たのまれぬ身は |
恋歌五 |
巻十六 |
0833 |
寝ても見ゆ 寝でも見えけり おほかたは 空蝉の世ぞ 夢にはありける |
哀傷歌 |
巻十六 |
0854 |
ことならば 言の葉さへも 消えななむ 見れば涙の 滝まさりけり |
哀傷歌 |
巻十七 |
0876 |
蝉の羽の 夜の衣は 薄けれど 移り香濃くも 匂ひぬるかな |
雑歌上 |
巻十八 |
0991 |
ふるさとは 見しごともあらず 斧の柄の 朽ちしところぞ 恋しかりける |
雑歌下 |