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       題しらず 読人知らず  
489   
   駿河なる  田子の浦浪  立たぬ日は  あれども君を  恋ひぬ日ぞなき
          
        「田子の浦」は現在の静岡県の富士川の河口あたり。その「田子の浦」に浪が立たない日はあっても、あなたを恋しく思わない日はない、という歌。 「君を恋ひぬ日ぞなき」というくだりは、487番の 「ひと日も君を かけぬ日はなし」という口ぶりと似ている。また、田子の浦に浪が立たない、ということはめずらしいことの譬えと考えられるが、それをさらにありえない事に発展させたと考えると、この歌は 1093番の「末の松山 浪も越えなむ」という陸奥歌にもつながるような感じがする。

  擬態のように似ていて、まぎらわしい出だしを持つ歌に次の読人知らずの歌がある。

 
366   
   すがるなく   秋の萩原  朝たちて  旅行く人を  いつとか待たむ
     

( 2001/11/20 )   
(改 2003/12/17 )   
 
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