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       題しらず 読人知らず  
491   
   あしひきの  山下水の  木隠れて  たぎつ心を  せきぞかねつる
          
     
  • 山下 ・・・ 山のふもと
  • たぎつ ・・・ 水が逆巻く
  
山のふもとに流れる水が、上は木に覆われながら激しく流れるように、表面には出さないけれど、騒ぐ私の心は堰き止めることができない、という歌。透明だけれども激しい気持ち、ということだろうか。 "木隠れて" という言葉が効いている。

  1001番の読人知らずの長歌に 「あしひきの 山下水の 木隠れて たぎつ心を 誰にかも ...」とあるのは、この歌をベースとしたものであろう。 「木隠れ」ということでは他に 1004番の忠岑の歌に「こ隠れたりと 思ひけるかな」というものもある。

  "せきぞかねつる" の「かねつる」は、「かね+つる」で、「〜できない」というニュアンスを表す接尾語「かぬ」の連用形+完了の助動詞「つ」の連体形である。この 「かぬ」を使った歌には次のようなものがある。

 
     
491番    たぎつ心を  せきぞかねつる  読人知らず
509番    心ひとつを  定めかねつる  読人知らず
668番    我が恋を  しのびかねては  紀友則
878番    我が心  なぐさめかね  読人知らず
1022番    たたるに我は  いぞ寝かねつる  読人知らず


 
( 2001/11/22 )   
(改 2004/02/15 )   
 
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