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       題しらず 読人知らず  
508   
   いで我を  人なとがめそ  おほ舟の  ゆたのたゆたに  物思ふころぞ
          
     
  • いで ・・・ さあ、さても
  • おほ舟 ・・・ 大きな船
  • ゆたのたゆたに ・・・ ゆったりとゆれ動いて (ゆたにたゆたに)
  
さあ、ぼんやりしていると言って私をせめるな、恋の悩みに揺れ動いて物思いにふけっているところなのだから、という歌。酔っ払いの歌のようにも見えるが、「おほ舟」の譬えは、次の 509番と合わせて見ると、心が揺れている様を表していると考えられ、どうしたら思いを果たせるかと悩んでいる男性の歌とも、早く返事を、と催促されている女性側の歌とも見ることができる。

  「いで」というのは、軽い呼びかけに使われる言葉で、恋歌四にある次の読人知らずの歌でも使われている。

 
711   
   いで人は   ことのみぞよき  月草の   うつし心は  色ことにして
     
        「いで」という言葉を使った歌をまとめておくと次の通り。

 
     
508番    いで我を  人なとがめそ おほ舟の  読人知らず
711番    いで人は  ことのみぞよき 月草の  読人知らず
1040番    いでや心は  おほぬさにして  読人知らず


 
        また、大船のようにゆったりと、という感じからは、振られた後の歌だが、753番の「雲もなく なぎたる朝の 我なれや」という歌が思い出される。

 
( 2001/11/08 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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