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       題しらず 読人知らず  
517   
   恋しきに  命をかふる  ものならば  死にはやすくぞ  あるべかりける
          
        恋しさに命を置き換えられるとしたら、死すら容易に思えたことだろう、という歌。だいたいのニュアンスはわかるが、「恋−命−死」の関係がわかりづらい。魂を売って、それと引き換えに恋が実るということだったならば、「死」さえ厭わなかったものを、という感じか。他の 「恋死ぬ」という歌については、492番の歌のページを参照。

  "あるべかりける" の 「べかりける」は、推測の助動詞「べし」の連用形+回想の助動詞「けり」の連体形。 40番の躬恒の歌などでは、「〜すべきだった」という意味で使われているが、この歌の場合は 「ある」と結びついて 「そうはしなかったけれど〜であったに違いないのだ」という感じであろう。 「べかりけり」という言葉を使った歌の一覧は、その 40番の歌のページを参照。

  「かふ(=替ふ・換ふ)」という言葉を使った歌に次のような忠岑の歌があり、歌の意味は異なるが、そちらの方は譬えがシンプルでわかりやすい。

 
602   
   月影に    我が身をかふる   ものならば  つれなき人も  あはれとや見む
     

( 2001/12/04 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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