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       題しらず 読人知らず  
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   月夜よし  夜よしと人に  つげやらば  こてふににたり  待たずしもあらず
          
        月の光がすばらしい、夜がすばらしいと人に言付けをしたのは、「来てください」と言ったのと同じこと、来るのを期待していないわけではありません、という歌。

  女性側の歌だろうが、恋の歌として見ると、状況が少しわかりづらい。いくつか歌を返したものの、相手が全然やってこないので、イライラして催促しているようにも見える。

  "こてふ" は「来(こ)+てふ(=と言う)」ということ。 「〜てふ」という表現を持った歌の一覧は 36番の歌のページを参照。 「月夜」と 「夜」が重なっているが、ここでの "月夜" は月自体を指すのであろう。ただ、本居宣長は「古今和歌集遠鏡」でこれについて「
月夜よしよゝしは。月夜よし月夜よしと重ねたる詞なるを。はぶきたるもの也。」として、同じ繰り返しを短縮したものと見ている。

  この歌は契沖「古今余材抄」のなどで万葉集・巻十一1011の次の歌との類似が指摘されている。

    我が宿の 梅咲きたりと つげやらば こてふに似たり 散りぬともよし

 
( 2001/11/19 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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