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蝉の声を聞くと悲しくなる、夏の衣のようにあの人の心が薄く弱まってしまうような感じがするので、という歌。
同じ友則の 876番の「蝉の羽の 夜の衣は 薄けれど」という似たような 「蝉」を使った歌があるが、言葉だけを見ると微妙な出し入れがある。つまり、876番の歌では、「蝉の羽−薄い」とは言っているが 「夏衣」とは言わず 「夜の衣」と言っている。一方この歌では 「蝉−夏衣」とは言っているが 「羽」とは言っていない。恐らく876番の歌の「夜の衣」は実際には夏衣であったのであろうし、この歌でも 「蝉の羽のように薄い夏衣のように」ということを指しているのであろうが、言葉がうまく選ばれているという感じがする。
また、本居宣長が「古今和歌集遠鏡」で、この歌を 「蝉ノナク声ヲキケバ モウオツツケ秋ガ近イト思ヘバ 頼ミニ思フ人ノ心モ秋風ガタツテ...」としているように 「蝉の声」を 「秋(飽き)の訪れ」のしるしと見る説もあるが、一般的には支持されていないようである。ちなみに現存する「寛平御時后宮歌合」にもこの友則の歌は残っていて、その中では春歌のグループの直後、夏歌のグループの先頭に置かれている。
「蝉の羽−薄い−夏衣」という歌としては、次のような躬恒の誹諧歌もある。
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