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       題しらず 読人知らず  
716   
   空蝉の  世の人ごとの  しげければ  忘れぬものの  かれぬべらなり
          
     
  • 人ごと ・・・ 人の噂 (人言)
  • かれぬ ・・・ 足が遠のいてしまう (離る:かる)
  
世間の人の声があれこれとうるさいものだから、お前を忘れたわけではないが、どうも足が遠のいてしまいそうだ、という歌。

  この歌の "空蝉の" という言葉は、続く 「世」にかかる枕詞であるが、その中の 「蝉(せみ)」という言葉も有効利用されている。つまり、その 「蝉」からスタートして、蝉の声が 「しげし(繁し)」を導き、「しげし」から雑草などが生い茂げる様を連想させ、さらにそこから 「枯る−離(か)る」へとつなげている。 「離る(かる)」という言葉を使った歌の一覧は 803番の歌のページを、「言しげし」という歌の一覧については 550番の歌のページを参照。

  「うつせみの」は「世」にかかる枕詞であると共に 「うつせみの世」として、次の読人知らずの歌のように 「はかない仮の現世」というニュアンスを表す。

 
73   
   空蝉の    世にも似たるか   花桜  咲くと見しまに  かつ散りにけり
     
        「空蝉」という言葉が使われている歌の一覧は、その 73番の歌のページを参照。また、「べらなり」という言葉が使われている歌の一覧は 23番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/10 )   
(改 2004/03/05 )   
 
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