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       返し 紀貫之  
915   
   沖つ浪  たかしの浜の  浜松の  名にこそ君を  待ちわたりつれ
          
        一つ前の 914番の歌で、藤原忠房が 「おきつの浜」と 「鶴(たづ)」を使って、健在のようでうれしいと言ったきたのに対し、その近くの 「たかしの浜」を詠んで返したもの。 「おきつの浜」は現在の大阪府泉大津市あたりの海岸で、「たかしの浜」はその直ぐ北の同じ海岸沿いにあり、現在の大阪府高石市あたりである。

  
高石の浜にある浜松の、松という名で、あなたの来るのをずっと待っていましたよ、という歌。 "沖つ" は、元の忠房の歌の 「(思ひ)おきつの浜」を受け、波が高いから 「たかし」へと続け、忠房が 
「鳴くたづの−尋ねくればぞ」と言ったのに対して、「浜の−浜松の」という同じようなかたちで返し、その後でも 「松」から 「待つ」を掛けて念を押している。 "名にこそ" という表現は、少し後の同じ貫之の 918番の「名には隠れぬ ものにぞありける」というものと似ている。

 
( 2001/11/26 )   
(改 2004/02/03 )   
 
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