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       題しらず 読人知らず  
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   世の中に  いづら我が身の  ありてなし  あはれとや言はむ  あなうとや言はむ
          
     
  • いづら ・・・ さても
  • あはれ ・・・ 心を動かされた時の感嘆詞
  • あなう ・・・ ああ嫌だ (あな憂)
  
この世の中に、さても、この身はあってないようなもの、とすればこの身を含めた世の中全部を「いとおしい」と言おうか、「嫌なものだ」と言おうか、という歌。

  897番の「年月を あはれあなうと すぐしつるかな」という読人知らずの歌が思い出されるが、「あなう」の方はよいとしても 「あはれ」の方は、喜びにも悲しみにも使われるのでニュアンスがとりづらい。 「あはれ−心が引きつけられる」/「あなう−心が嫌なものとして遠ざける」という感じか。 「あはれ」という言葉を使った歌の一覧は 939番の歌のページを、「あな」という感嘆詞が使われている歌の一覧については 426番の歌のページを参照。

  この歌のパターンは春歌上の先頭にある 1番の在原元方の「去年とや言はむ 今年とや言はむ」と非常によく似ている。どちらが先に作られたかは不明だが、並べて見ると元方の歌の方にもじんわりとした味が出てくるように思える。

 
( 2001/10/24 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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