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       返し 読人知らず  
974   
   難波潟  うらむべきまも  思ほえず  いづこをみつの  海人とかはなる
          
        この歌は 直前の読人知らずの歌が「難波の浦」で「うきめをみつの 海人となりにき」と言っているものに対する返しで、歌の意味は、あなたは私からの恨みで 「うきめ」を見た海人となったとおっしゃいますが、海辺に浮いた海藻を見ると言っても、遠浅の難波の干潟のどこにそんな場所があるでしょう、いったいどこで 「うきめ」を見たというのですか、ということ。 "難波潟" の 「潟」は干潟ということで、引き潮の時に現れる部分のこと。 "うらむべきま" の 「ま」は 「間」で、空間・時間の 「間」。

  「潟」なので「浦」はないはず、ということで 「恨まれる筋合いはない」ということを言い、さらに干潟なのだからそこに 「浮き布(め)」など漂っていないはず、ということで 「憂き目」にあったとしても、それは自分とは関係ない場所で起きたことなのでしょう、とかわしている。 "思ほえず" は 「思い浮かばない」ということで、続いて置かれている次の歌でもその言葉が使われている。

 
975   
   今さらに  問ふ べき 人も  思ほえず   八重むぐらして  門させりてへ
     
        「思ほゆ」という言葉を使った歌の一覧は 33番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/11 )   
(改 2004/02/09 )   
 
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