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       しはつ山ぶり 読人知らず  
1073   
   しはつ山  うちいでて見れば  笠ゆひの  島こぎ隠る  棚なし小舟
          
     
  • うちいでて見れば ・・・ 眺め渡してみると
  • 棚なし小舟 ・・・ 船の左右の内側に棚のついていない小舟
  詞書の 「しはつ山ぶり」とは 「しはつ山」ではじまる曲(の歌詞)ということ。宮中で楽器に合わせて歌う歌(大歌)の一つ。

  歌の意味は、
「しはつ山」から眺め渡して見ると、「笠ゆひの島」の影の中に漕ぎ隠れて行く小さな舟が見える、ということ。 「しはつ山」および 「笠ゆひの島」は大阪湾に面した和泉・摂津の国あたりの地名だろうということ以外は不明。この歌は万葉集・巻三272にある次の高市黒人の羇旅歌とほとんど同じである。

    しはつ山  うち越え見れば  笠ぬひの  島こぎ隠る  棚なし小舟

  また、島と舟ということでは 409番の読人知らずの「ほのぼのと 明石の浦の 朝霧に」という歌が思い出され、"棚なし小舟" の歌としては次の読人知らずの歌が恋歌四にある。

 
732   
   堀江こぐ  棚なし小舟   こぎかへり  同じ人にや  恋ひ渡りなむ
     
        "うちいでて"  と同じ接頭語の「うち」が使われている歌の一覧は 12番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/24 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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