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       とりもののうた 読人知らず  
1074   
   神がきの  みむろの山の  さかき葉は  神のみまへに  しげりあひにけり
          
     
  • 神がき ・・・ 神域をかこむ垣 (みむろの枕詞)
  • みむろの山 ・・・ 神の降りる山
  • さかき ・・・ ツバキ科の常緑樹
  
「みむろの山」の榊の葉は、神の御前に生い茂り、そのお力を称えております、という歌。

  詞書にある 「とりもの」とは 「採物」で、神楽の時に神官が手にとって神を招く物、あるいはその行為のこと。古今和歌集の中では 「榊(さかき)・葛(かづら)・弓・杓(ひさご)」の四つがとられているが、本来の 「採物」は次の九種類であるとされる。

 
     
  榊   幣   杖   篠   弓   剣   鉾   杓   葛


 
        「古今和歌集全評釈(下)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-208753-7) によれば、「採物」の歌は、神側の立場での 「本歌」と神を招く側の 「末歌」があり、それがペアで歌われ、この 「みむろの山」の歌および続いて置かれている同じ "さかき葉" の次の歌も末歌であるとのことである。

 
1075   
   霜やたび  置けど枯れせぬ  さかき葉の   たち栄ゆべき  神のきねかも
     
        「しげる」という言葉を使った歌の一覧は 550番の歌のページを参照。

  九種類のすべての歌を揃えていなかったり、本歌と末歌の片方だけを載せているいう点を見ると何か 「きちんとしていない」感じを受けるが、神楽歌という歌のプールから歌を拾い上げた、ということなのであろう。なお、
「古今和歌集全評釈  補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) で、1080番の 「ひるめのうた」の歌について、「「ささのくま」の 「ささ」は採物の笹に関係あるか。」ということが述べられている。

  この歌から 1084番までの十一首が 「神遊びのうた」という分類になっている。

 
( 2001/12/10 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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